私はシステム関連の会社に入社して以来、今現在に至るまで、COBOL言語での開発に携わっています。
20年以上前から「COBOL開発の需要は無くなる」と言われてますが、今後COBOLはどうなるのか、COBOL技術者はどう進むべきかを今回考えてみます。
目次
COBOLの現状
国家試験「基本情報技術者試験」では、「教育機関等における指導言語としての利用の減少、本試験における受験者の選択率の極端な低下」という理由から、2019年秋期以降の試験でCOBOLが廃止され、Pythonが追加されました。(参考:独立行政法人情報処理推進機構プレスリリース『基本情報技術者試験における出題を見直し~ COBOL廃止、Python追加、プログラミング能力・理数能力等を重視 ~』)
ビジネス現場では「COBOLによる開発ニーズと技術者の減少」が起きています。
基幹システムのオープン化によるCOBOLニーズ減少
2000年代以降、オープン化の波が押し寄せ、基幹システムの汎用系からオープン系への完全移行を強く進める企業が多く見受けられました。私もかつてシステムリニューアルというお題目のもと、大々的に移行作業に携わった経験があります。
COBOLでの開発が、現在まで各業界の大企業の基幹業務を支えてきたことは言うまでもありません。しかし、ここ最近では、Java、PHP、Pythonに代表されるWeb系言語による開発が人気であり、COBOLによる開発は縮小傾向です。
高齢化によるCOBOL技術者の減少
企業でのニーズが減り、「COBOLはなくなる」と言われ続けてきたこともあり、ベテランCOBOL技術者は若い人材を育てて来ていません。また、若い技術者もCOBOLから自身のキャリアを始めようとしません。
若い人が少なくなり、自然とCOBOL技術者の高齢化は進みます。私が現在所属している部署では、COBOL技術者の年齢は50代~60代の方がほとんどです。そして優秀な技術者でも、ここ最近ではリタイアされる方が多く見受けられます。
このようにCOBOL技術者の高齢化によって、絶対数は確実に減少している状況です。
それでもCOBOLがなくならない理由
このように、いつ淘汰されてもおかしくないCOBOLですが、いまだ生き残っているのが事実です。なぜCOBOLはなくならないのでしょうか。
トータルコストの検討結果
企業が基幹システムを汎用系からオープン系への移行する理由の1つが、コストの削減です。一般的にオープン系の方がコストが下がるとされます。しかし、OSの頻繁なバージョンアップからハードウェアの故障による交換や寿命の短さ、保守期限などにより、総合的に見れば、コストも人員も汎用系システムよりコストがかかる場合があります。そうすると、大変な労力とコストをかけ、すべてリプレースするいったことは現実的ではありません。
そのため、現状のシステムはベースとして残しつつ、保守開発を続けるという企業が少なくないのです。
COBOL規格改訂と開発環境変化の兆し
全体ニーズは縮小したといえど、企業における根強いCOBOL利用もあってか、2002年にはCOBOL規格が17年ぶりに大改訂され、オブジェクト指向にも対応するようになりました。さらに、2018年には、Amazon Web Services(AWS)でCOBOLが利用できるようになり、話題となりました。
60年以上前に生まれたCOBOLですが、今の状況に合わせて変化し、さらに開発環境も整い始めているのです。
COBOL技術者はCOBOLをベースにオープン系知識を
トータルコストアップの懸念や、大幅変更によるリスク回避などから、今後も引き続き汎用系をベースに保守業務を行う企業は少なくないでしょう。ただ、ベース部分にはCOBOLを使いつつ、画面部分はWeb系言語、インフラはAWSなどのクラウドサービスに移行していくと思われます。
COBOL言語は今後もなくならず、減少傾向であるCOBOL技術者の希少価値は高まります。ただし、オープン系との組み合わせによる総合的な技術力が求められるはずです。汎用系のCOBOLを理解し、かつオープン系の知見がある技術者は重宝されることでしょう。オープン系の知識に乏しいCOBOL技術者は、今のうちから身につけておくべきです。
なおtdiでは、汎用機としての優れた信頼性から行政や金融機関など様々な場で使用されているIBM社のメインフレームに対し、安定的な要員確保をすべく、IBM製メインフレーム関連ビジネスに特化した会社・TDIゼットサービス株式会社を2019年に設立しております。
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執筆者プロフィール
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新人時代にはVBなどの開発を行っていましたが、ここ最近はHOST系COBOLでの開発ばかり行っています。
OutSystemsやAWSを勉強し、知識の幅を拡げています。
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