失敗原因から考える失敗しないERP導入

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日本に本格的なERPパッケージが登場してから約30年になります。その間、多くの企業がERP導入を試みましたが、残念ながら当初の目標を達成できなかった事例も多く見られます。一言で失敗と言っても、プロジェクト中止、一部機能の導入断念、納期遅延、導入費用超過、導入は成功したがユーザ満足度が低いなど様々です。

前回の以下記事では、ERPとは何か、ERPのパッケージについてご紹介しましたが、今回は典型的なERP導入失敗の原因から、ERP導入に成功するカギを考えていきます。

従来の基幹業務システムとERPの違い

従来の基幹業務システム開発とERPシステム導入の違いは以下の通りです。

対象システム 導入対象 導入方法
従来の基幹業務システム 部門または業務単位 スクラッチ開発
ERPシステム 全社 パッケージ導入

従来システムは部門以下の単位での導入が中心ですが、ERPシステムは導入対象が複数の部門を跨ぐので、部門間調整が必要になります。それは、部門間の利害調整だけにとどまらず部門・業務の廃止・縮小を含めた大掛かりなものになります。そのため、ERP導入には、この部門間調整をリードできる経営層の強力な関与が必須となります。また、ERP導入はパッケージを利用するため、帳票や他システムとのI/Fおよび若干の追加機能の開発を除き、システム開発が概ね終了している状態からプロジェクトが始まります。即ち、ERP導入が失敗する根本原因はシステム開発自体の失敗では無いという事になります。

導入対象に起因する失敗

ERP導入は大規模な予算を投入し全社を巻き込む全社プロジェクトになるため、その覚悟と準備が不足していると、プロジェクト失敗のリスクが高くなります。(図1)

円滑な部門間調整を実現するためには、全社・全部門の賛同と協力が必要です。この失敗パターンは、経営層が早期にプロジェクトの危機に気付けば、経営トップのリーダーシップにより建て直しが可能ですが、気付きが遅れるとプロジェクト中止に繋がる場合もあります。また、どうにかシステムの導入に漕ぎ着けたとしても、エンドユーザの参画度合いが低い場合は、ユーザ満足度の低下に繋がります。

導入方法に起因する失敗

ERP導入ではシステムの大半をERPパッケージが占めるため、この仕様を無視して要件定義を行った場合、パッケージの機能と要件に大きな乖離が生じる可能性が高まります。その乖離を追加開発で埋めようとすると、大量の追加開発が必要になり、開発コストの超過と納期遅延に繋がります。ERP導入では、「何を作るか」ではなく、「どのようにパッケージを使うか」という視点で要件を決める必要があります。

対象システム 導入方法 導入フェーズの視点
従来の基幹業務システム スクラッチ開発 システムの機能を決める
ERPシステム パッケージ導入 パッケージの使いかたを決める

ERP導入に成功するカギ

経営トップのリーダーシップのもとでエンドユーザが積極的に参画しているERP導入プロジェクトは失敗しません。エンドユーザ自身がパッケージの使いかたを主導的に決めた場合、多少の不満は残っても納得感のあるものになります。ERP導入に成功するカギは、プロジェクトの準備段階からの経営トップのリーダーシップとエンドユーザの積極的な参画体制の構築です。

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執筆者プロフィール

Tanaka Yoshiaki
Tanaka Yoshiakitdi ITコンサルティング部
大手企業向けのERP導入プロジェクトを多数手掛けてまいりました。今後は中堅企業を中心にERP導入に邁進していく所存です。
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