「社内の大量の文書データを何かに活用したいが今は使えていない」や、「お客様の声を分析して、満足度向上や製品開発に活かしたい」というお悩みは、業種問わず、さまざまな企業が持っているかと思います。
構造化されたデータの活用はすでに行われていますが、文書データのような非構造化データについては、活用に苦慮されている企業がまだまだ多いのが現状です。
そこで、強力なテキストマイニングツールであるIBM Watson Explorer(以下、WEX)を用いて、非構造化データを分析し、新しい知見や洞察を発見する取り組みについてご紹介いたします。
IBM Watson Explorer(WEX)とは
WEXは、企業内外の膨大な量の構造化型および非構造化型の情報を、収集/加工/分析/表示する、テキストマイニングと検索機能を提供するプラットフォームです。WEBやソーシャルメディア、コールセンター対応ログ、アンケートやお客様の声、クレーム情報など、分析対象となるテキストデータを、効率よくクローリングして、大量のデータを収集します。収集した大量のデータを、超並列処理で解析し、分析画面と検索画面から、多くの成果を得ることができるテキストマイニングツールです。
他のテキストマイニングツールと比較した際、WEXは特に以下の3つの点で長けています。
- 大容量のデータ分析に対応
- 数百万規模のデータを数秒で分析でき、実際に膨大な文書データの分析に使われている実績があります。
- 強力な構文解析機能
- 言語要素を漏れなく抽出する構文解析機能があります。2008年5月には、米国SSPA(Service and Support Professionals Association)の、SSPAアワード(SSPA Recognized Innovator Awards)を受賞しました。
- 豊富な分析・レポート機能
- 相関分析、評判分析、感情分析など、多種多様な分析・レポート機能を備えているため、分析後に具体的なアクションにつながるよう、データを抽出できます。
導入を成功させる最大のキモは「課題設定」
WEX導入にあたり、1番大切なことは、「<テキストデータから解決アプローチする課題>を設定してから導入を開始すること」です。
では、なぜ課題設定が重要なのでしょうか。
テキストマイニングを利用して、価値ある知見を得るためには、「データ」と「切り口(ファセット)」が必要です。WEXに限らずテキストマイニングツールは、「データ」が無くては始まりません。そして、それをどのような「切り口」で見るかがキーポイントになります。例えば、「時系列/地域別で分析したい」や「文書の種類を分類して、そこから知見を得たい」、「文章に現れる商品名がカギになるはずだから、文章を分析したい」というものが、「切り口」です。
「データ」や、「切り口」が適切でなければ、テキストマイニングはその大きな力を十分に発揮できません。そこで、課題を設定することで、「データ」に対し、どのような「切り口」で分析するかが定義できます。
課題設定の成功例
課題設定をして成功した例を、具体的にみてみましょう。表では、金融業、製造業それぞれの事例を挙げています。
例1 | 例2 | |
---|---|---|
業種 | 金融業 | 製造業 |
課題 |
・お客様相談センターへの相談ログを残しているが、量が膨大で全てを見きれない。 ・相談を分類し、どのような相談が増えているかなどの見える化を行いたい。 |
・回収・修理が必要となるような、製品の不具合について、早期発見したい。 |
解決策 | ・WEXを導入し、テキストマイニングによりお客様相談センターへの相談ログを自動で分類。 ・どのような相談がどの程度あるのか、時系列で見える化。 |
・製品サポートセンターのクレームのログをテキストマイニングし、クレーム情報の分類を行い、機種との間の特別な関係の有無や、直近の傾向を分析。 |
データ | お客様相談センターへの相談ログ | お客様からのクレームログ |
切り口 | 地域、時系列、相談種別、など | 時系列、機種名、問題、など |
結果 |
活用できていなかった膨大な相談ログを見える化し、定期レポートを簡単に作成できるようになった。 ⇒次のアクションを計画可能になった。 |
クレーム内容の分析から、製品不具合が存在する可能性のある機種を、早期に見つけ出すことが可能になった。 ⇒大規模な回収修理を避けられた。 |
このように、課題設定があることで、スムーズにプロジェクトが進みます。
執筆者プロフィール
- 京都大学 大学院理学研究科 数学・数理解析専攻で学び、tdiでSE、営業を経験してきました。現在は、広くAIやデータ分析に関わる業務に、何でも屋として携わっています。
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