「IBM Watson Build Challenge」の日本チャンピオンとして、2018年3月19日~22日にかけてLas Vegasで開催された「Think 2018」に参加してきました。
IBM Watson Build Challengeの取り組みについては、下記、過去記事をご参照ください。
目次
Think 2018とは?
2018年3月19日~22日の4日間にわたり、Las VegasのMandalay Bayで開催された米IBM主催の年次カンファレンスイベントです。世界中から40,000名、日本から750名を超える顧客、パートナーが参加しました。今後のIBMの方針発表をはじめ、1000を超えるテクニカル・セッション、各社キーマンによる講演、さらには展示会場でのデモ展示が行われました。
会場のMandalay Bay Convention Centerは、世界最大級のコンベンションセンターであり、その施設の広さには圧倒されました。にもかかわらず、各セッションルーム前の通路では身動きが取れなくなってしまうほどの人の多さに、これまた圧倒されました。
関心高まるAI・コグニティブビジネス
tdiは、「IBM Watson Build Challenge」の日本チャンピオンとして、Think 2018 内で、2度講演の機会をいただきました。
- Watson Build Japan Champion Session
日時: 3月20日(火) 11:00-11:40 (BP Zone シアター) - コグニティブビジネスへの取り組み – Create New Generation Zoo by “Smart Zoo” –
日時: 3月22日(木) 9:20-9:35(MGM Conference Center 117) ※Japan Forum内での講演
講演では、IBM Watsonを利用したソリューションサービス「スマートZOO」のご紹介を中心に、tdiのソリューションビジネスへの取り組みについてご説明しました。
聴衆の皆さまからは、「我が社の技術者と一度、技術情報交換の場を設けてほしい」というフィードバックを多数いただき、AIを利用したソリューション開発やコグニティブビジネスへの取り組みに、多くの企業様が関心をもたれていることがわかりました。

「変革」を成し遂げるためのThink 2018 Key Topics
自社講演の合間にIBMキーマンによる各種講演に参加しました。その中で主に気になったKey Topicsを3つご紹介します。
AIとDataの統合、Cloudの活用
AI、Data、Cloud。いまやおなじみのトピックですが、有効活用できている企業はどれほどあるでしょうか。
IBM会長・社長兼CEOのGinni Rometty氏によると、AI活用の鍵はDataにあるとのこと。AIの検証・導入に従事している人間であれば誰もがうなずく内容かと思いますが、Rometty氏が指摘していたのは、「すでにpublicに検索することの出来るデータはたったの20%。お客様が持つ残り80%の非公開データの価値をAIを活用することで最大化していく。」ということでした。残り80%の非公開データを活用し、あらゆるプロセスにAIを組み込むことで、人と機械がともに働くことできる、すなわち誰もが「Putting Smart to Work(スマートな仕事をすること)」ができると説明されました。
また、Cloudの活用については、複数の講演者の方が口をそろえて「組み合わせ」が重要だと述べていました。publicにするべきものとprivateに閉ざすべきものを的確に判断し、複数のプラットフォームを組み合わせることで、既存環境・既存ビジネスを有効活用できるといいます。
マルチなDeveloperの需要
IBMのCDOであるBob Lord氏によると、「いまや、世界に2200万⼈いる開発者の95%が何かしらの形でIT購買の意思決定に影響を与えている」そうです。
つまり、企業改革に関わるコグニティブサービスやプラットフォームの選択に開発者の意見が重要視されているということ。裏を返せば、企業が求めているのは新しい技術知識・スキルを身につけたDeveloperということになります。
Mark III SystemsのStan Wysocki氏は「我々はフルスタックエンジニア(=複数の専門分野を持つエンジニア。マルチエンジニア。)しか雇わない」と公言していました。各企業がこぞってイノベーションを追い求める現代において、Developerに求められる役割・スキルが大きく変化していることを痛感しました。
パートナーエコシステムの構築
IBMはパートナー企業の育成・ネットワーキング支援にかなりの投資を行っているそうです。各講演においても、各社との協業、エコシステム(=一社だけではなく、業界全体が収益を上げるための生態系)の構築の重要性を強調する場面が多々ありました。
一社の力で出来ることは限られています。スピード感を持ってソリューションビジネスを展開していくためには、他社のソリューション、スキル、サービスの活用、または各社の強みを組み合わせた協業体制の構築が必要です。世界中から様々な最新技術を保持する企業が集まる本イベントのような機会は、ビジネス展開のためのネットワーキングの場として有効に活用できると感じました。
聴衆を惹きつける講演のポイント
今回は、講演者としてThink 2018 に参加したこともあり、各講演に共通するストーリー構成にも着目してみました。
キーワードを提示する
Rometty氏は、基調講演の冒頭に「ビジネスの転換、社会の転換、そしてIBM⾃⾝の転換が起こる」というキーメッセージを提示し、そのキーメッセージを軸に約1時間半の講演を行いました。
この話を聴いて何を学ぶことが出来るのか、どういった観点で話を聴けばいいのかをはっきりさせることで、聴き手は講演者が伝えたいテーマを念頭において話を聴くことができます。
Success Storyを紹介する
今年のThink イベントは、コンセプトのひとつに「Story」を掲げているそうです。
重大な課題を発見し、そこで何を考え、どういった行動をとり、最終的にその課題がどのように解決されたか。ソリューションや戦略の説明にSuccess Storyの紹介を添えることで、それが業界や社会にどれほどのインパクトがあるのかということを明確に伝えることが出来ます。
また、聴き手は「自分だったら?自分の会社だったら?自分の業界だったら?」とイメージを膨らませながら能動的に話を聴くことができます。
会社説明は「何を感じ、何を考え、どうやって会社を経営してきたか」を紹介する
私の経験上、聞き手の皆さんが最も興味を失う瞬間が、会社説明です。
会社概要データはもちろんのこと、業務内容や取り組みなどは、ただ事実を伝えるのではなく、どういったことを感じているか、感じたことに対しどのように考え行動してきたかを説明することで、聴き手にとって共感できるポイントや参考にしたいと思えるポイントとなります。ちなみに、Clear Technologies社の講演者は会社説明を「Our Journey」と表現していました。
おわりに
本イベントへの参加目的は、「IBM Watson Build Challenge」日本チャンピオン講演でしたが、最新技術情報の取得、ITトレンド・戦略についての学びなど、イベントを通して吸収できた情報がたくさんありました。また、イベント期間中は企業間のネットワーキングの場が多数設けられ、普段は直接関わりのない企業様との交流を持つことが出来ました。
各社から多数のエグゼクティブの方々が出席する本イベントでしたが、現地でお会いした参加者の方々の中には、若手の技術者・営業の方の姿も見られました。
グローバルな視点で最新情報をキャッチできるこのような場に参加し、意欲的に学び・経験を得ることは、これからの社会、企業を引っ張っていく人財にとって大変重要なことだと感じました。
執筆者プロフィール

- tdi AI・コグニティブ推進部
- 関西で基幹システム開発、BIツール導入を経験後、拠点を東京に移しIBM Watson案件を中心としたソリューション展開に注力しています。
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