先日、「他部署の取り組みやメンバーのスキル・経験を知ることによって、”ITエンジニアの価値向上”や”今後のビジネスの活性化”をするための土台を形成する」ことを目的とした社内テクニカル・カンファレンスを開催しました。このカンファレンスは各部署の成果報告会や部署メンバーによるライトニングトーク(※1)などのコンテンツで構成され、50名近くの社員が参加しました。
この記事では、社内テクニカル・カンファレンスを開催するに当たってどんな準備が必要なのか、運営チームがどんな動きをしていたのかを、企画と当日運営の2つの視点におけるポイントをお伝えできればと思っています。
目次
テクニカル・カンファレンスを開催するきっかけ
現在当社には、期初に行われる全社キックオフイベントがあります。しかし、「開発」や「技術」にフォーカスするような社内イベントが多くはないため、もっとそういった社内イベントを増やしても良いのではないかという話もちょくちょく耳に入ってきていました。またIT業界にいる以上、もっと開発力や技術力を高めていきたいという思いも強くあり、どうすれば当社のさらなる技術力向上に繋げることができるか、かねてより社内で検討事項として上がっていました。
そこで、エンジニア同士の交流を深めることで技術力の向上を促し、今後の当社の発展に繋げることができるような社内イベントを開催しようじゃないか!ということになったというのが始まりでした。
テクニカル・カンファレンス企画のポイント
それでは、ざっくりきっかけをお話したところで、本題に入っていこうと思います。まずは企画段階でのポイントです。ポイントは大きく分けて2つあります。
- 若手中心のアイデアソンが大事
- マネジメント層を巻き込んで徹底的な周知を行う
若手中心のアイデアソンが大事
やはり、こういったイベントはコンテンツの内容で魅力的にも、そうでないようにも捉えられてしまいます。コンテンツの基本的な部分はすぐに決められたのですが、それらの詳細や、より盛り上げるための仕組みなどを考えるのにかなり手間取りました。そこで今回は、アイデアソン(※2)を実施してコンテンツの詳細部分を決定しました。
※2 アイデアソンとは アイデアとマラソンを組み合わせた造語です。 新しいアイデアを生み出すために行われるイベントで、主にIT分野で使われています。 1990年頃アメリカで使われ始めたと言われており、ハッカソンと違い、物を作るのではなく、アイデアを生むことに重きを置いて開催されます。(Wikipedia「アイデアソン」より)
また、アイデアソンを行うに当たって(その後のためにも)運営メンバーを増やすことにし、部門内の若手社員(1~3年目)に声をかけ、開催目的を伝えた上で運営メンバーへ勧誘しました。最終的に集まった、発起人と合わせて合計12人を運営チームとしてアイデアソンに臨みました。今回のアイデアソンは次のような流れで行いました。
- 「基本コンテンツを盛り上げるために」をテーマに、アイデアを各自3つ以上ずつ書いてくる
- ペアブレストを行う(10分間 × 3回)(※3)
- ブレスト内容を自身のアイデアに反映させる(10分)
- 各自のアイデアをランダムに並べ、1人5点ずつ投票(15分)
※3 ペアブレスト実施時には、こちらのスライドを参考に下の絵を作成・説明しました。
結果としては、若手メンバーで構成した甲斐があって、斬新なアイデアが多く出てきたと思います。ただ、全体をまとめる人が少なかったので、時間を決めていなかったら議論がさらに発散し、収拾が着かなかったかもしれません。これはブレストの難しいところで、落とし所を決めかねてしまいがちですよね。本来は、アイデアをグループごとに分けて、グループごとに因果関係をつけて、結論を文章にまとめるというのがブレストのゴールなのですが、この時は、私とは別の発起人の二人に、イベントの目的の方へとアイデアを上手く収束させてもらいました。
マネジメント層を巻き込んで徹底的な周知を行う
アイデアが固まってきた所で部門内に告知をして、当日のライトニングトークなどの発表者を募りましたが、初めは中々声が上がりませんでした。そもそもイベントの目的をちゃんと伝えきれていなかったということもあるとは思うのですが、これにはかなり困りました。
解決策としては、徹底的に周知し直すことにしました。各マネジメント層の方々に再度イベントの目的をしっかりと説明したところ、好意的なご意見もいただくことができました。その結果、マネジメントの皆様にもご協力いただき、より確実に広い範囲に発表者の再募集をかけることができました。
そうして周囲の方々を巻き込んでいくことでなんとか発表者が予定していた人数まで揃うことができました。ウソかホントか、日本人は空気を読むことを強く意識するなんて話がありますが、今回は全体の雰囲気がイベントに好意的になったことでプラスな影響を与えてくれたのかも知れません。本当にご協力いただいた方々には感謝の気持ちに堪えません。
テクニカル・カンファレンス当日のポイント
続いて、当日の運営に関連したポイントをお話したいと思います。これも大きく分けて次の2つのポイントがあります。
- 参加者を能動的に参加させる工夫をする
- 会場の雰囲気作りが重要
参加者を能動的に参加させる工夫をする
今回のカンファレンス開催に向けて、「せっかく”テクニカル”・カンファレンスなのだから、もっとデベロッパー感を出せないか」という意見が出ました。そこで、”カンファレンスを積極的に盛り上げていくためのツール”として、「bravo!」というリアルタイムフィードバックシステムを開発しました。これはいわゆる某TV番組の「へぇボタン」のようなもので、聴衆が発表に対して「へぇ」と思ったらボタンを押すことができます。3秒間でボタンが押された回数が、棒グラフとして描画される(下図の①部分)仕組みになっています。そして、そのグラフを会場前方に映し出すことで、発表者も聴衆もリアルタイムに発表に対するフィードバックを視覚的に得ることができるよう、工夫しました。この「bravo!」は、ユーザインタフェースにはLINEbotを使用しており、導入もLINEで友達追加するだけなので簡単です。
ちなみにこれは、先程の企画でのポイントで挙げたアイデアソンで出てきたアイデアの1つで、私を含めた同じ部署のメンバー5人で開発しました。今回は簡単な「bravo!」のアーキテクチャと画面のイメージを載せておきます。詳しくはまた別の記事に書きますので、そちらをご覧ください。
会場の雰囲気作りが重要
日本人は空気を読むことを強く意識するという話を挙げましたが、当日の会場の雰囲気作りもまさにそれが重要でした。運営の当初の想定としては、前半は各部の成果を発表するので真面目に、後半は各部署のエンジニアがライトニングトークをするのでポップに進行していく予定でした。実際の前半は真面目に進行しすぎたかな、というのが反省点ですが、その反面、後半からは中々に盛り上がりました。狙い通りといえばその通りだったのですが、会場の雰囲気を盛り上げるためには色々と工夫を凝らしました。
その工夫は大きく3つあります。そのうち、2つ目と3つ目は先程企画のポイントで挙げたアイデアソンで出たものです。
- 司会の言葉遣い
- オーディエンスとの相互コミュニケーション
- ケータリングとアルコール
1つ目は司会の言葉遣いです。後半からの司会原稿は、敬語ではありつつも、前半よりもライトな敬語にし、司会自身もノリを少し軽くすることで、全体の雰囲気を柔らかくするようにしました。同様な効果として、例えば時間経過を伝えるドラの音や、時間超過を伝える音楽など、効果音も後半は多く使うように工夫しました。
2つ目はオーディエンスとの相互コミュニケーションです。先程の「bravo!」もそうなのですが、オーディエンスにも参加してもらえる仕組みを考えました。メンバーのスキルセットを自己紹介してもらうコンテンツでは、ただ登壇して自己紹介してもらうのではなく、登壇前にその人のスキルにまつわるクイズを用意し、オーディエンスに答えてもらうようにしました。クイズの回答者に正解の場合は2UMB(※4)、不正解の場合は1UMBをプレゼントしました。これも、能動的に参加してもらう一つの工夫です。
※4 UMBとは、仮想通貨をイメージしたこのカンファレンス独自の通貨です。1UMBは1うまい棒です。
そして3つ目。それは、後半からケータリングにお酒が登場するということです。お酒の力と「bravo!」のちょっとゲームじみた感覚を借りることによって、後半以降のコンテンツは予定通り良い盛り上がりを見せました。
しかしながら、お酒は諸刃の剣ですので、量の調節にはかなり気を使いました。しかし、開催後に行った事後アンケートの中に、量が少し多かったのではないかとのご指摘もいただいておりました。お酒を嗜みながら進行するという趣向自体は好評だったので、今後継続する際には、飲み足りないくらいにしておき、懇親会などをセッティングしてそこでエンジニア同士の交流の機会を増やすように持っていければと思います。
おわりに
ここまで、社内カンファレンスを開催する上でのポイントを企画と当日の視点で挙げてきました。 ポイントは各2つずつ、合わせて次の4つでした。
- 若手中心のアイデアソンが大事
- マネジメント層を巻き込んで徹底的な周知を行う
- 参加者を能動的に参加させる工夫をする
- 会場の雰囲気作りが重要
加えて言わせていただくとするならば、こういった社内カンファレンスなどを開催する際には、とにかく早く動いて、とにかく「周囲を味方につけること」が第一だと考えています。これから社内イベントを企画されている方がもしいらっしゃったら、まずは「空気」から変えていくのはいかがでしょうか。
「bravo!」の開発はアプリ側とインフラ側でそれぞれ記事を書く予定です。アプリ側は主にLINEbotの実装方法などについて、インフラ側はAWSとgrafanaを使った、ほぼサーバレスなリアルタイム集計&グラフ表示の実装方法などについて触れると思いますので、お楽しみに!
執筆者プロフィール
- 社内の開発プロジェクトの技術支援や、Javaにおける社内標準フレームワークの開発を担当しています。Spring BootとTDDに手を出しつつ、LINE Botとかもいじったりしています。最近はマイクロサービスを勉強しつつ、クラウドアプリケーションを開発できるエンジニアの育成にも力を入れてます!