はじめに
みなさん、AI資格というと何を思い浮かべますでしょうか。日本でおそらく一番有名なのは、日本ディープラーニング協会が提供しているG検定とE資格でしょう。しかし、そのほかにもAWSの機械学習エンジニア認定資格やGCPにおける機械学習エンジニア資格などさまざまな資格があります。その中でも個人的に重要だと思っている資格は、Googleが提供しているTensorFlowデベロッパー認定資格です。本記事では、この資格について紹介させていただきたいと思います。
留意:本記事の内容は2021年4月の情報です。時間の経過に従って変更される箇所もあるので、最新情報を公式サイトで確認することをお勧めします。
試験の紹介
TensorFlowデベロッパー認定資格は名前の通り、主にTensorFlowというGoogleが開発したフレームワークを用いて、ディープラーニングと機械学習に関する問題を解決する能力を評価します。ビギナー向けなので、まだ全くAIについて知らない人でも少し勉強すれば合格可能です。
では、なぜこの資格を取得した方がいいのでしょうか。
まず、この資格はグローバルに通用するもののため、取得することで自分の技能をアピールできます。次に、この資格はTensorFlowというAIタスクでよく用いるフレームワークに関するものであるため、実際のAIビジネスの現場で需要があります。最後に特筆すべきは、この試験は入門知識の内容が多く、AIの初心者でもちゃんと勉強すれば2、3週間で十分合格できることです。
短期間の勉強でこんなに多くのメリットがあるので、受験をお勧めします。
試験の内容にはAIの理論は一切なく、全てプログラミングの問題です。具体的にはPycharmの環境でTensorFlowを用いて機械学習モデルを構築します。試験の内容は以下の通りです。
- 入門的な質問:2問
- この質問は非常に易しく、数行のコードで済みます。簡単な線形モデル構築などです。
- 画像認識:1問
- 前処理などのコードはすでに準備されており、CNNのモデル構築がメインとなります。私の認識では、ほとんどの場合は画像分類問題だけ出題されます。画像分類のタスクに慣れている方は問題ないと思います。
- 自然言語処理:1問
- BoWなどのテキストデータのベクトル化やLSTMなどのモデルを構築し、テキストデータを学習する方法について出題されます。自然言語処理の初心者でも解答できる程度のレベルです。
- 時系列の処理:1問
- これは一番難しい問題です。理由としてはデータが多いからであり、モデル構築自体はそんなに複雑ではないでしょう。
以上の通り、毎回合計5問が出題されます。試験時間は5時間です。問題が少ない割に時間が長いのですが、だからといって難易度が高いかというと、そういう訳ではありません。それぞれの問題で、モデルを学習する時間がかかるからです。それぞれの問題には5つのテストケースがあります。クリアできたテストケースの数がわかりますので、できるだけ多くのテストケースを通るようにモデルを構築します。時間内であればモデルは何回でも提出可能です。
試験の費用は100USDで、約1万円です。また、日本語のガイドがありますが、試験の言語自体は英語しかありません。ただし、簡単な英語ばかりなので、少し練習すれば問題ないと思います。
勉強方法
では、どうすればAIの初心者が短時間でこの資格を取得できるでしょう。さまざまな勉強方法がありますが、私が行った方法の一つをご紹介します。
私はこの資格の公式サイトでも紹介しているTensorFlow Developer Professional CertificateというCourseraのコースを受講しました。受講したと言っても無料のAuditのモード(動画や練習問題の内容は見られますが、問題の回答はありません)を利用しました。ちゃんと勉強すると一ヶ月ぐらいかかりますが、私はさらっとだけ勉強したので、2週間で済みました。本当はしっかり勉強した方が良いのですが、この試験に合格することだけを目的にするのであれば、この程度の勉強でも大丈夫だと思います。
ちなみにこのコースの言語も英語です(前半の動画には日本語の字幕があります)。英語といっても簡単な英語だけで、字幕もあるため、Webでの翻訳を駆使すれば受講できるはずです。また、Auditのモードを利用すると練習問題の回答がわからないと前述しましたが、受講した人の回答はWeb上にたくさん公開されていますので、「TensorFlow in practice github」と検索すれば容易に入手できます。よって、費用はかけずに、しっかりと勉強できます。
受験の際の注意点
この試験は自宅でいつでも受験可能なのですが、事前に様々な準備作業が必要です。これらの作業に困らないように、しっかりとガイドを読むことをお勧めします。また、受験中にネット検索もできるので、試験の内容は受講したCourseraコースの内容と似ていればそちらのページを開いて調べることも可能です。そのため、このコースのページを前もって開いておいた方がいいと思います。そのほかに、ローカルの環境で受験すると言っても、最終的に提出するのはモデルと重みだけなので、学習するためには別の環境を利用することもできます。最後に、試験が完了したら合否の通知がすぐメールで届きます。通知が届かない場合、迷惑メールのチェックや試験の係員へ連絡を取るようにしましょう。また、合格した場合、証明証も通知と一緒に届きます。資格の有効期間は3年間となります。
おわりに
本記事ではTensorFlowデベロッパーの認定資格について紹介しました。AI資格は様々ありますが、この資格のようにAI初心者が短期間で取得でき、多くのメリットを得られる資格はなかなかありませんので、受験をお勧めします。みなさん、ぜひチャレンジしてみてください。
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執筆者プロフィール
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AIエンジニアとして就労しています。Standford大学のAndrew Ng教授によるオンライン機械学習コースの卒業証明書とTensorflow検定の資格を持っています。
主にデータ解析や画像処理などのAI案件にかかわっており、AIの知識を蓄えています。
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